俳句の作り方 枯るの俳句

 火をつけてやりたきほどに枯れしもの  後藤比奈夫ごとうひなお

ひをつけて やりたきほどに かれしもの

枯るが冬の季語。

冬枯ふゆがれの子季語。

 冬枯は「冬が深まり木や草が枯れはて、野山が枯一色となった蕭条たる光景。

一本の木や草についても言う。

近代以降は『枯る』という動詞も季語として使われるようになった。」

(俳句歳時記 冬 角川書店編)

 

 

 句意を申し上げます。

余りにも木々や草が枯れ果ててしまった。

いっそのこと燃やしてしまいたい。

 

 この句の枯れし「もの」は自然界に存在するものばかりではありません。

物思いの物でもあるのです。

作者は抱えている寂寥・疑念・夢・努力などを空しいと感じています。

刹那的にそれらに火をつけて燃やしてしまいたい。

寂寥・疑念・夢・努力など最初から無かったことにしてしまいたい。

作者は虚無感に苛まれつつ最後の力を振り絞って虚無を葬り去ろうとしています。

火をつけてやりたきほどに枯れしもの

 

 

 後藤比奈夫について・・・。

大阪府出身。1917年生まれ、2020年没。(103歳)

1941年大阪大学物理学科卒業。

1951年父後藤夜半について俳句の道に入る。

1961年ホトトギス同人。

ホトトギス派の信条である客観写生・花鳥諷詠を追求。

 

 

 枯るを季語に用いた俳句を紹介します。

石枯れて石の言霊風となる  河野南畦こうのなんけい

沼枯るる茫漠夢と境無し  宮津昭彦みやづあきひこ

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